(ワレ)になにか用か、お嬢さん」
「あっ! ジロジロ見てごめんなさい。大きい身体だから、ラルフを乗せて走れそうだなって思って」

 失礼だったかな、と慌てたように両手を振って謝ると、ルプトゥムは「ほう?」と興味深そうにラルフを見た。四足歩行のルプトゥムは横になったラルフより大きいので、その背に乗って風になれるのでは? と説明すると彼と使い魔は互いの視線を合わせる。

「アシュリン、こっちおいで」

 手招(てまね)かれてラルフに近付くと、頭の天辺(てっぺん)から足のつま先まで眺められ、どうしたのだろうと口を開くと、「ルプトゥム、伏せ」とラルフがルプトゥムに声をかけた。

 ラルフの言う通りに伏せをするルプトゥム。

「ちょっとごめんね」
「え? えっ?」

 ひょいとアシュリンの身体を抱き上げて、伏せをしているルプトゥムの背中に乗せる。ふわふわの毛並みは触り心地が良く、思わず何度も()でてしまった。

「そんなにそっちの毛並みがいいの?」

 ムッとしたようにジト目になるノワールに、アシュリンは「そ、そうじゃないよ! ただ、ノワールとは触り心地が違うなぁって思っただけだよ!」と両手をぶんぶんと振ってノワールに伝えると、くわぁと大きな欠伸をされてしまい、アシュリンは自分がからかわれたことを知り、頬をふくらませる。

『おおー、なんだかカッコイイですねー』

 ルプトゥムがゆっくりと立ち上がると、目線が高くなる。アシュリンはルプトゥムの背中に乗ったまま、「わぁ!」と歓喜の声を上げた。

 ほうきにまたがって空を飛んだことはあるけれど、それとはまた違った魅力(みりょく)があった。自分自身の背が高くなったような錯覚(さっかく)に、アシュリンは興奮(こうふん)したように頬をゆるめ、ラルフに手を差し伸べる。