「お手紙たくさん書くね!」
「……うん、待っているわ」

 手を繋いでフォーサイス家に戻る二人。

 ホイットニーの言ったように、良い香りがしてぐぅぅ、とアシュリンのお腹の虫が鳴いた。

 慌ててお腹を押さえたが、ホイットニーは気にした様子はなく、「美味しそうねぇ」とただ柔らかく目元を細めていた。リビングに入ると、パァーン! と大きな音が鳴り、紙飛沫が舞い、アシュリンは目を丸くする。

「今日は盛大にいくぞー!」

 グリシャがアシュリンの腰を掴み、ふわっと持ち上げてその場でくるくると回る。父にこんなふうに遊んでもらったのは久しぶりで、アシュリンは「目が回るー!」と文句を言いながらも顔がふにゃりと笑っていて、嬉しさを隠せていない。

 その日はごちそうをたくさん食べて、ホイットニーとエレノアと一緒にお風呂に入り、家族全員で寝た。三年前、兄が旅立つ前日もこうしていたなぁと思い出し、アシュリンは目を閉じて旅のことを考えた。

 ――どんなことが待っていても、きっとだいじょうぶ。

 目を閉じているといつの間にか眠りに落ち、気が付いたら朝になっていた。

『さぁさぁ、夢と希望の冒険へ、レッツゴー!』
「……興奮してるなぁ、この本」
「ノワール、わたしの本と仲良くね」

 朝起きて、身支度を整えて、朝食を摂ったあとに祖父からもらったリュックを背負う。

 本はアシュリンの近くでパタパタとページを開いて、閉じてと忙しい。

「それじゃあ、みんな、行ってきます!」

 笑顔で大きく手を振って、フォーサイス家と村人たちに見送られながら、村をあとにした。

 アシュリンの冒険が、いま始まる!