ドキドキとワクワクが混ざり合って、アシュリンの気持ちは昂っている。ホイットニーは娘の感情を機敏に感じ取っているのか、村人たちとすれ違うたびに足を止め、アシュリンが旅立つことを話す。

 そのあいだ、アシュリンはホイットニーと村人の話を聞くだけだ。一通り話し終えると村人が「アシュリンちゃん、旅を楽しんでね」と一言、彼女に声をかけて去っていく。それを数回繰り返すことで、アシュリンの昂っていた気持ちは段々と静まっていった。

「さぁ、落ち着いたところで旅に必要なものを買いそろえるわよ」
「お母さん、わざとだったの?」
「アシュリンが興奮するのもわかるんだけどね。こういう買い物をするときは、冷静さが必要なのよ」
「れいせいさ?」
「そう。自分に必要なものを見極めるためにね」

 パチンとウインクをするホイットニーに、アシュリンはなるほど、とつぶやいた。確かに興奮したまま買い物をしたら、旅に必要のないものまで買ってしまうかもしれない。

 ホイットニーは村の商店でいろいろと買った。旅に必需品なものもサクサクと決めて、どんなものが良いかアシュリンの意見を聞きながら買っていく。

「お兄ちゃんのときも、こうして買ったの?」
「ええ。きっとエレノアのときもこうして買うわ」
「そっか、エレノアもいつか旅立つんだね」

 妹のエレノアが旅立つのはいつだろうと、アシュリンは考えた。彼女はまだ五歳。アシュリンと同じ年だとしても、五年はある。兄のアンディと同じ十二歳なら、あと七年。