魔法かばん職人のケヴィンが作るリュックだ。それがいつか自分のものになると知って、どうして今くれないのだろうと考えていたことを一年前。そのことを思い出し、彼女はケヴィンのもとまで走っていく。

「おじいちゃん! これ、本当にわたしがもらっていいのっ?」
「もちろんですよ、アシュリンさん。これはおじいちゃんが、アシュリンさんだけのために作ったリュックですから」
「ありがとう、おじいちゃん! とってもうれしいわ!」

 ケヴィンの作る魔法かばんは、村でも村の外からも大人気で、なかなか手に入らない貴重なものだと伝えられている。

 そんなケヴィンが作った魔法のリュックだ。アシュリンはにこにこと笑って、彼にお礼を伝えた。

「それじゃ、早速そのリュックにいろいろ詰め込みに行こうか」
「うん!」
「アシュリンは私と一緒に行こうね。村の人たちにも、挨拶しなくちゃ」
「はーい!」
「本は置いていこうね。その本、賑やかだから」
『えー、そんなぁ……』

 心底残念そうな声を出す本を、リビングのテーブルの上に置いて「ごめんね、行ってくるね」と撫でてから、ケヴィンから受け取ったリュックを背負い、ホイットニーと手を繋ぐ。

 彼女の顔を見上げると、ちょっとだけさびしそうに微笑んで、きゅっと胸が痛んだ。でも、すぐにそんな様子を隠して、アシュリンの手をぎゅっと握り返した。

「おじいちゃんのリュックの感想は?」
「とっても軽いわ! ピンク色で可愛いし……わたし、可愛いもの大好き!」
「そうね、とっても似合っているわ。おじいちゃんのリュック、魔法がかかっているから、楽しみにしていてね」
「どんな魔法なのかなぁ……!」