「今年の大会は私が主催することになりました。大会の優勝者を結婚相手に決めるのはいかがでしょう。」

 大会というのは、年に一度開催される騎士の腕試し大会だ。階級や部隊に関係なく誰でも参加することができ、最後まで勝ち続けた者が優勝者となる。これまでは国王の主催で行われてきたが、今年はマリウスが主催する。主催者となれば、優勝者に与える褒美の品を決める権限がある。

「それであればフェリシアも納得すると思います。」
「誰が優勝するかは、当日までわかりません。爵位のない者が優勝する可能性もありますが、よろしいですか。」
「そ、そうですか……」

 ロベルトはあからさまに苦い顔をした。フェリシアの結婚相手は、フェリシアが好きな相手であることは絶対条件だが、ロベルトとの関係がうまくいかないのも困る。

「では大会の優勝者をフェリシアの護衛として迎えるのはいかがでしょうか。フェリシアの専属護衛として常時そばにいる男性がいれば、少しは抑制になるでしょうし、護衛になった相手がフェリシアの結婚相手として相応しいとなれば、伴侶として迎えることができます。」

 これまで地道にフェリシアの結婚相手を探してきたが、いまだにフェリシアが納得する相手は見つかっていない。フェリシアが独身のままではパーティーは開けないし、毎日男性たちが押しかけてくる。

 城に迷惑をかけている上、フェリシアの身の安全も危うい。大会の優勝者ならば腕は確かなはずだ。まずは護衛として迎えて、公爵家に相応しい人物なのであれば、結婚相手として考えてみるというのは良い方法かもしれない。

「承知致しました、殿下。大会の優勝者をフェリシアの護衛として迎えます。」
「わかりました。ではそのように手配致します。」

 公爵邸から城の執務室に戻ったマリウスは、早速準備に取り掛かった。