マリウスは、フェリシアの父ロベルトの屋敷を訪れた。

「叔父上、フェリシアの結婚相手は決まりそうですか？」
「いえ、全く見向きもしません。」
「どのような方を紹介しているのか、見せていただけますか？」
「はい……」

　ロベルトが使用人に声をかけると、テーブルの上にたくさんの書類が置かれた。マリウスは書類を手に取った。どの人物も優秀だが騎士いない。これではフェリシアが怒るのも無理はない。

「爵位がないといけませんか。」

　書類の人物は全て爵位を持つ者だ。ロベルトが身分を気にするのは理解できるが、書類の人物の中にフェリシアの好きそうな人物はいない。

「娘の結婚相手だと思うと、それなりの家柄や身分の者をと考えてしまいます。」

　叔父の言い分は理解できるが、このままではフェリシアの結婚相手は一生決まらない。フェリシアに特定の相手がいなければ、この先もずっと危険にさらされてしまう。

「叔父上、ご提案がございます。」
「なんでしょうか。」

　ロベルトは前のめりになった。フェリシアの結婚相手探しは難航を極めている。何か策があるなら全力で乗っかりたい。