「はぁ……」
「早く慣れてください、アラン様。」
「ですが、バスルームの護衛は無理です。そんなことしたら護衛ではなくなってしまいます。」
「いつ何時もフェリシア様を御守りすることが護衛の務めです。四の五の言っていられませんよ。」
「そ……そうですよね。」

　ゼロ部隊ではとにかく対象を守るということが最優先になっているのだろう。マリーやオルタンスは対象を護衛するために全力を注げるのだ。しかし自分は護衛としては駆け出しだ。技術や精神なんて培われていない。そんな自分がフェリシアとお風呂に入ってしまったら—

「アラン様、凹んでいる場合ではありません。フェリシア様が湯汲みを終えるまで、部屋の中を巡回し続けてください。私は外を見てきます。」
「わ、わかりました！」

　あんな牢屋のようなバスルームなのに、中に入る時でさえ護衛が必要だとは、どれだけ危険な状況で生活してきたのだろうか。もしかしたら風呂から出たら輩が部屋にいたなんてことがあったのかもしれない。アランは部屋の中をくまなく歩いた。

　そもそもフェリシアの部屋は公爵令嬢の部屋とは思えないほど地味で暗い場所にある。部屋の中は豪華だけれど窓から光は入って来ない。こんな最果ての地のような場所にあるのに、それでも人が入って来るなんて異常だ。

　フェリシアは綺麗だし可愛いし色気もあって優しくて可愛くて可愛いから、見たいとか会いたいと思う気持ちは理解できるけれど、フェリシアを危険な目に遭わせてまで付きまとう輩は許せない。アランはフェリシアが普通に生活できるように、そばにいて護衛として精進しようと心に決めた。