「フェリシア様、お連れしました。」
「アラン様！？」
「お待たせして申し訳ありません、フェリシア様。」
「ま……待ってなんていませんわ。えっと……早くお会いしたいなと思っていただけです。」

　俯いてもじもじしているフェリシアは信じられないくらい可愛い。このまま抱きしめてしまいたいという衝動に駆られたが、アランは手を握りしめて必死に堪えた。

「お食事はお済みになりましたか？」
「いえ、私はまだ……」
「ではあの、ご一緒してもよろしいでしょうか。」
「もちろんです。」

　護衛は一緒に食事をするものなのかという疑問は残るが、断る理由なんてない。フェリシアは顔を綻ばせてアランに近づくと、城の中を歩いていた時のようにアランの右腕に抱きついた。アランは体をビクっと震わせた。この距離は修行が必要だ。

　フェリシアはアランの右腕を抱きしめたままソファーに座らせた。そのまま横並びに腰かけているから当然座っている距離感もおかしなことになっている。

「フェリシア様、近すぎませんか。」
「アラン様は私の護衛なのですよね？」
「護衛の距離ではないような……」
「良いんです。ふふふ。」

　すごく可愛いし、すごく嬉しい。断る理由なんてない。けれど、ただの護衛がこんなに近くに座っていていいのだろうか。それにこれから食事をするのに、この状態では食事なんてできそうにない。