アランはマリーを追ってフェリシアの部屋へ向かっていたが、先導しているマリーの動きが普通ではない。周囲に目を光らせながら俊敏に廊下を進んでいく。ただのメイドでないことは一目瞭然だ。

「マリーさんはメイドではないのですか？」
「メイド兼護衛です。」
「なるほど。」

　俊足のマリーに置いて行かれないよう必死について行くが、フェリシアの部屋にはなかなか辿り着かない。屋敷が広いからという理由だけではない気がする。

「フェリシア様のお部屋はこんなに遠いのですか。」
「侵入者が多いので、お部屋がわからないようにしてあります。」

　部屋にいつまでもたどり着かないのはフェリシアの安全のためだったのか。これではフェリシアも不便だろう。

「着きました。」

　フェリシアの部屋に着くと息が上がっていたがマリーは平然としている。フェリシアの護衛ならこの程度で息が上がってはいけないと言われているような気がして、アランは必死に呼吸を整えた。すると中から声が聞こえてきた。

「いつまで待たせるのよ！」
「フェリシア様、もうすぐいらっしゃいます。」
「もうすぐっていつなの！」
「落ち着いてください。」
「早く来て！アラン様ー！」

　アランはビクッとしたが、少しだけ顔がにやけてしまった。フェリシアが自分を待っていてくれたと思うと嬉しい。

「アラン様、お願いしますね。」
「はい……」

　恥ずかしそうに頭をかいているアランを横目に、マリーは扉を開けた。