ロベルトに連れて行かれたアランは困惑していた。フェリシアの護衛なのに、フェリシアと離れてしまって良いのかと思うが、フェリシアの父であるロベルトの誘いを断ることもできない。

「さぁ、アラン君、飲みたまえ！」

　ロベルトは上機嫌でワインをどんどん開けていく。アランは酒に強い自覚はなかったが、ロベルトと一緒に飲んでいても、酔いが回ることはなかった。

「公爵様、飲み過ぎはお身体に良くないですよ。」
「君は私の体のことを気遣ってくれるのか。あぁ、素晴らしいな、君は！ははは！」

　アランは、ロベルトに何を言っても褒められていた。とても嬉しいことだが、今はフェリシアの護衛をしなければいけない。もしかしたら屋敷の中にフェリシアを襲うような輩がいるかもしれないのだから、フェリシアのそばにいたいのだ。

「公爵様、私はフェリシア様の護衛をしなければなりません。」
「あぁそうだな。君が娘の護衛として来てくれたことを光栄に思うよ。ずっと娘のそばにいてやってくれ。さぁ、次のワインだ。」

　アランのグラスにワインが注がられる。ずっとこの調子だ。いつまで続くのだろうか。アランはそわそわしながらも、ロベルトに付き合った。

「公爵様？大丈夫ですか？」

　しばらくすると、ロベルトはソファーにもたれかかって目を閉じてしまった。寝てしまったのだろうか。アランはロベルトをソファーに横たわらせると、人を呼びに行こうとして立ち上がった。すると待ち構えていたかのようにマリーが現れた。

「マリーさん、ちょうど良かった。公爵様が寝てしまって……」
「そのうち使用人が来ますからほったらかしで大丈夫です。それよりフェリシア様が大変なんです。早く来てください！」
「はい！」

　フェリシアに何があったのだろうか。アランは客間を飛び出した。