サーシャは公爵邸から馬車が戻ってくると、御者から話を聞いた。

「フェリシア様を乗せた後、無事に帰れたのは初めてです。こんなに嬉しいことはありませんよ。」
「そうでしたか。よかったです。」

 サーシャはフェリシアとアランが歩いたところを通って執務室へ戻った。そこかしこでフェリシアの噂がされている。フェリシアに思い人ができた、結婚相手ができた、結婚するらしい……など様々な噂があるようだが、とりあえずこれで良いだろう。

「殿下、無事に済みました。城の中はフェリシア様にお相手ができたという話題で持ちきりです。馬車も無事に戻って参りました。」
「そうか。よかった。あとは彼次第だね。」

 サーシャは紅茶を淹れてマリウスに差し出した。窓から穏やかな風が流れてきてマリウスの髪を揺らした。