アランは朝起きて支度を整えると、世話になった隊長と同僚たちに挨拶を済ませて、急ぎ足でマリウスの執務室へ向かった。

「アラン、朝早くから来てくれてありがとう。今日からよろしくね。」
「よろしくお願いします!」

 今日からフェリシアの護衛だ。なんだか大会のときよりも緊張する。アランは無駄に汗をかいていた。

「とりあえず、着替えてもらおうかな。」

 マリウスが言うと、サーシャはアランに着替えの服を差し出した。アランは服を見つめたまま動かなくなった。こんな派手な服ははじめて見る。

「殿下、私はフェリシア様の護衛なんですよね?」
「そうだよ。」
「護衛をする服ではないような……」
「公爵令嬢の護衛だから特別なんだよ。」

「アラン様、こちらへどうぞ。」

 アランはサーシャに促されて部屋の奥に連れて行かれた。キラキラしたものがたくさんついているし、ひらひらしたものもたくさんついている。これはマリウスが着る服なのではないかと思いながらも着替えてみたがやっぱりおかしい。違和感しかないし、動きにくい。

「着替えましたが、これでよろしいのですか?」

 着替えの済んだアランを見て、マリウスは満足気に微笑んだ。アランは思った以上に良い仕上がりだ。どこからどう見ても貴族にしか見えない。

「殿下、これでは護衛ができるかどうか……」
「君はフェリシアの隣にいるだけで良いんだ。それで充分護衛になるからね。」

 アランは首を傾げた。第2部隊長のように見た目が強そうな騎士ならそれでいいかもしれないが、自分の見た目は明らかに新人だ。隣にいるだけで護衛になるなんてことがあるのだろうか。

「あ、来たみたい。予定より早いね。」

 サーシャが扉の前で待ち構えていると執務室の扉が叩かれた。サーシャが扉を開くと、メイドと共に扇で顔を隠した女性が入ってきた。おそらくフェリシアなのだろう。アランは姿勢を正した。