「すごく良い大会だったね、サーシャ。」
「はい。こんなに盛り上がるとは思いませんでした。」
大会で優勝したのはアランだった。入隊したばかりの無名の騎士が第2部隊長のファリスに勝ったのだ。大会が終わった後の熱狂は、いつまでもおさまらなかった。
決戦の後、マリウスはアランとの対決に敗れたファリスに声をかけた。
「ファリス、お疲れ様。残念だったね。」
「殿下、申し訳ございません。隊長である私が、新人に敗れてしまい……」
「仕方ないよ。彼は強かった。」
「技術面では私の方が上でした。しかし、気持ちの面では彼の方が上だったように思います。」
「そうだね。すごく良い試合を見せてもらったよ。ありがとう。」
「精進致します。」
試合が始まるとすぐにファリスは格上の技をアランに見せつけた。ファリス優勢の空気があり、誰もがファリスの勝利を予感した。しかしアランはあきらめなかった。一瞬の隙を見逃さずに勝利を手にしたのはアランだった。それは、ファリスが言うように、負けたくないという気持ちが強かったからだと思う。
アランはフェリシアの応援をしっかり受け止めていた。意味のわからないフェリシアの応援を目を輝かせて見ていた。負けたくないと思ったのはフェリシアの応援を受けたからなのかもしれないと思うと、今後のフェリシアの生活に希望が持てる。
執務室で大会のことを思い出していると、扉をノックする音が聞こえた。やって来たのは大会の優勝者アランだ。
「待っていたよ、アラン。優勝おめでとう。」
「ありがとうございます!」
アランは新人騎士らしく純粋に目を泳がせながらマリウスに敬礼した。
「素晴らしい戦いだった。第2部隊の隊長に勝つなんて、本当に凄いことだよ。」
「ありがとうございます!」
「そこへ座って。」
「失礼します!」
マリウスに促されて、アランは恐る恐るマリウスの向かいに腰掛けた。ふかふかのソファーに動揺しながら、アランは目の前にいるマリウスを目を丸くして見ていた。王太子殿下とこんなに間近で会話をすることになるとは思わなかった。アランはマリウスに圧倒されて汗が出てきた。
「ここへ呼んだのは、優勝の賞品について聞いておきたかったからなんだ。優勝者にはフェリシアの護衛を務めてもらう予定だったんだけど、君は優秀だから第1部隊への移籍を斡旋してもいいと思ってる。どうかな?」
「わ、私を第1部隊に?」
「君なら充分やれると思う。隊長にも許可を取ってある。」
入隊間もない自分でも第1部隊の凄さは話に聞いている。これから修練して、いつか移籍できたらと思っていたが、こんなに早くにチャンスが来るとは思ってもみなかった。このチャンスを逃す手はない。
「では……!」
第1部隊に移籍させて欲しいと言おうとして、アランは言葉を飲み込んだ。決勝前に見たフェリシアの顔が頭に浮かぶ。
「殿下、もし私が第1部隊への移籍を選んだら、フェリシア様の護衛はどうなるのでしょうか。」
「これから考えるけど、護衛は他の人になると思う。」
第1部隊への移籍か、フェリシアの護衛を選ばなけれないけない。これは究極の選択だ。アランは神妙な顔をして真剣に悩んだ。すると、執務室に慌てた様子のサーシャが駆け込んできた。
「はい。こんなに盛り上がるとは思いませんでした。」
大会で優勝したのはアランだった。入隊したばかりの無名の騎士が第2部隊長のファリスに勝ったのだ。大会が終わった後の熱狂は、いつまでもおさまらなかった。
決戦の後、マリウスはアランとの対決に敗れたファリスに声をかけた。
「ファリス、お疲れ様。残念だったね。」
「殿下、申し訳ございません。隊長である私が、新人に敗れてしまい……」
「仕方ないよ。彼は強かった。」
「技術面では私の方が上でした。しかし、気持ちの面では彼の方が上だったように思います。」
「そうだね。すごく良い試合を見せてもらったよ。ありがとう。」
「精進致します。」
試合が始まるとすぐにファリスは格上の技をアランに見せつけた。ファリス優勢の空気があり、誰もがファリスの勝利を予感した。しかしアランはあきらめなかった。一瞬の隙を見逃さずに勝利を手にしたのはアランだった。それは、ファリスが言うように、負けたくないという気持ちが強かったからだと思う。
アランはフェリシアの応援をしっかり受け止めていた。意味のわからないフェリシアの応援を目を輝かせて見ていた。負けたくないと思ったのはフェリシアの応援を受けたからなのかもしれないと思うと、今後のフェリシアの生活に希望が持てる。
執務室で大会のことを思い出していると、扉をノックする音が聞こえた。やって来たのは大会の優勝者アランだ。
「待っていたよ、アラン。優勝おめでとう。」
「ありがとうございます!」
アランは新人騎士らしく純粋に目を泳がせながらマリウスに敬礼した。
「素晴らしい戦いだった。第2部隊の隊長に勝つなんて、本当に凄いことだよ。」
「ありがとうございます!」
「そこへ座って。」
「失礼します!」
マリウスに促されて、アランは恐る恐るマリウスの向かいに腰掛けた。ふかふかのソファーに動揺しながら、アランは目の前にいるマリウスを目を丸くして見ていた。王太子殿下とこんなに間近で会話をすることになるとは思わなかった。アランはマリウスに圧倒されて汗が出てきた。
「ここへ呼んだのは、優勝の賞品について聞いておきたかったからなんだ。優勝者にはフェリシアの護衛を務めてもらう予定だったんだけど、君は優秀だから第1部隊への移籍を斡旋してもいいと思ってる。どうかな?」
「わ、私を第1部隊に?」
「君なら充分やれると思う。隊長にも許可を取ってある。」
入隊間もない自分でも第1部隊の凄さは話に聞いている。これから修練して、いつか移籍できたらと思っていたが、こんなに早くにチャンスが来るとは思ってもみなかった。このチャンスを逃す手はない。
「では……!」
第1部隊に移籍させて欲しいと言おうとして、アランは言葉を飲み込んだ。決勝前に見たフェリシアの顔が頭に浮かぶ。
「殿下、もし私が第1部隊への移籍を選んだら、フェリシア様の護衛はどうなるのでしょうか。」
「これから考えるけど、護衛は他の人になると思う。」
第1部隊への移籍か、フェリシアの護衛を選ばなけれないけない。これは究極の選択だ。アランは神妙な顔をして真剣に悩んだ。すると、執務室に慌てた様子のサーシャが駆け込んできた。