フェリシアは顔が外から見えない広いつばのある大きな帽子をかぶり、公爵令嬢とは思えない素朴で質素なワンピースに身を包んでいた。隣にはこの国の王子、マリウスが立っている。質素な装いのフェリシアと並ぶマリウスは不釣り合いで、すれ違う人は「またマリウスの贔屓の女性が変わったのか」という目で見ている。
「フェリシア、もういい?」
「お兄様、お願い!もうちょっとだけ……」
マリウスはため息をついた。フェリシアとは幼少期からいつも一緒にいて、兄と妹のような関係だ。フェリシアの扱いには慣れているが、こうも長く居座られるとさすがに疲れてくる。
「フェリシア様、殿下は次のご予定がございますので、この辺でよろしいでしょうか。」
マリウスの秘書サーシャに言われて、フェリシアは渋々その場を離れた。フェリシアが熱心に見ていたのは汗を流して稽古をする騎士たちの姿だ。フェリシアは騎士の演習が見たいと前触れもなくマリウスの元を訪れて、強引に演習場を案内させていた。
「お兄様、明日も参りますわ!」
「フェリシア様、殿下はしばらくお忙しくなります。」
サーシャの言葉を聞いて、帽子の下からわずかに覗くフェリシアの顔が明らかに引きつっている。ここ数日はマリウスの都合を考えずに押しかけてきていた。フェリシアは残念だろうが、マリウスは多忙な公務の日程の合間を使ってフェリシアに付き添っている。サーシャはいい加減にして欲しいと思っていた。
「あぁ、なんてことかしら!次に見られるのがいつになるのかわからないなんて!」
フェリシアはとにかく騎士が好きだった。毎日城へ来て演習場を見ていたい。できることならば永遠に見ていたい。帰らずにずっと騎士のそばにいられたらどんなに幸せだろうかと毎日思っていた。
「フェリシア、もういい?」
「お兄様、お願い!もうちょっとだけ……」
マリウスはため息をついた。フェリシアとは幼少期からいつも一緒にいて、兄と妹のような関係だ。フェリシアの扱いには慣れているが、こうも長く居座られるとさすがに疲れてくる。
「フェリシア様、殿下は次のご予定がございますので、この辺でよろしいでしょうか。」
マリウスの秘書サーシャに言われて、フェリシアは渋々その場を離れた。フェリシアが熱心に見ていたのは汗を流して稽古をする騎士たちの姿だ。フェリシアは騎士の演習が見たいと前触れもなくマリウスの元を訪れて、強引に演習場を案内させていた。
「お兄様、明日も参りますわ!」
「フェリシア様、殿下はしばらくお忙しくなります。」
サーシャの言葉を聞いて、帽子の下からわずかに覗くフェリシアの顔が明らかに引きつっている。ここ数日はマリウスの都合を考えずに押しかけてきていた。フェリシアは残念だろうが、マリウスは多忙な公務の日程の合間を使ってフェリシアに付き添っている。サーシャはいい加減にして欲しいと思っていた。
「あぁ、なんてことかしら!次に見られるのがいつになるのかわからないなんて!」
フェリシアはとにかく騎士が好きだった。毎日城へ来て演習場を見ていたい。できることならば永遠に見ていたい。帰らずにずっと騎士のそばにいられたらどんなに幸せだろうかと毎日思っていた。