「何か刃先に……?」

 ナイフに固い物に当たったので、ジョヴァンニに視線を向けると彼は苦笑した。

「懐中時計で……頂き物なんだよ」

 これを誰に貰ったか言えないと咄嗟に思ったのか、胸ポケットから懐中時計を取り出したジョヴァンニは、素知らぬ顔でそう言って肩を竦めた。

 王族が使うには……あまりにも、簡素な作りのような気がする。

 無言で俺がポケットから同じ物を取り出すと、ジョヴァンニは何もかも悟ったようにして、ため息をついた。

「これは、リンゼイは……僕には相談に乗ってくれたお礼なんだと言ってくれた。あの子に悪気はないんだよ?」

「知ってる」

 きっと、気に入った物を見つけたから、お世話になったジョヴァンニにもこれを贈ろうと思ったのだろう。

 なんとなく、リンゼイが何を思ったのか想像がつく。

 何の悪意もないのだろう。ジョヴァンニと俺が、同じように喜ぶだろうと思って。

 しかし、ジョヴァンニと同じ懐中時計……一年に一度の誕生祝いなのに。