理解があると感心したように言ったジョヴァンニに、ここで気になっていたことを思い出したので聞くことにした。

「マリアローゼは、どうする?」

 俺がジョヴァンニに次に会えたら聞きたかったのは、これだ。処罰が下されないのであれば、個人的に手を下すしかない。

 何の罪もないリンゼイを、あの自分勝手な女は殺しかけたのだ。

「ああ……将来のフォンタナ公爵夫人を殺しかけたからね。立派な殺人未遂だ。父母もこの事は知っている」

 その時に微笑んだジョヴァンニには、何の感情も見えなかった。嬉しいのか悲しいのか、寂しいのか。

 色で例えるならば、無色だ。

 幼い頃から決められていた婚約者マリアローゼはもうすぐ、彼の婚約者ではなくなると言うのに。

 ジョヴァンニは神から特別に愛されたのか、何もかも与えられた王位を約束された王太子であるのに、性格は温厚で優しく礼儀正しく公平で……彼と話していると、俺はたまに思う。

 そんな完璧な人間が、本当に存在しているのだろうかと。

 とは言え、マリアローゼについては、これで終わりだろう。