「ブルゴーニュ会長っ……おはよう、ございます」

「ああ。おはよう」

 この学園の生徒会長であり、金髪碧眼かつ美麗な容姿を持つ絵に描いたような王子様、ジョヴァンニ・ブルゴーニュは、勇気を出して挨拶をした私を見て微笑み、そして、廊下の先を進んだ。

 これだと、ただジョヴァンニと挨拶を交わしただけ……ダメダメ! このままだと、せっかく作戦立ててもらったのに、何の成果も得られず終わっちゃう!

「あのっ……」

 私が彼の背中に声を掛けたので、ジョヴァンニは立ち止まって振り返った。

「僕に、何か?」

 ジョヴァンニの身分は王子様ではあるけど正統派メインヒーローだから、他の個性派攻略対象者たちとは違って、癖がない性格で優しく温厚だ。

 ついこの前に、貴族しか持ち得ないはずの魔法の力に目覚め、平民の身でありながら貴族学園に入学することになった私が、こんな無作法をしたからって彼は怒らない。

 ジョヴァンニは、いわゆる女の子の多数派が好む、望み通りの王子様。

 けれど、ここからどうするべきかさっきまで考えていたはずなのに、頭の中は真っ白になってしまった。