「……ヴィクトリア・エインズワース ! 君とは婚約破棄だ!」

 だいぶ前から、幼い頃からの婚約者である第二王子チャールズより、このように婚約破棄されるだろうことは私にだってわかっていた。

 学園内でも密やかに囁かれる、身に覚えのない数々の黒い噂。

 婚約者チャールズとただ話しているだけの何の罪もないご令嬢に嫌がらせを繰り返し、あまつさえ彼女を亡き者にしようと企んだと……。

———ええ。何もかも、全て無実なのですけど。

「何か言いたいことがあるのなら、言ってみろ」

 私は何も言えずに、チャールズ殿下を見た。

 この諦めきった目を見ても真実の愛に酔う彼にしてみれば、この展開が気に入らない女が自分を睨んでいると思っているだろう。

「……この期に及んでここで一言も言い訳もせぬとは、なんという女だ。命を取られようとしていたミゼルが可哀想だ。連れて行け! 刑は追って言い渡す!」

 何かを発言するように促されても無言のままでいた私を睨み、チャールズ殿下は吐き捨てるようにそう言った。

 命令通り二人の兵士が、両側から私の腕を無遠慮に掴んだ。