イーディスとの楽しいお茶会を終えた私は、フレイン侯爵邸からの帰り道。暗くなりだした風景と馬車窓に薄く映る自分を見て、なんとも説明が付かない複雑な気持ちを持て余していた。

 イーディスとエミールの関係が羨ましくないと言えば、嘘になってしまう。

 けれど、もしエミールのような情熱的な男性であったとしたら、私は婚約者のことを好きにならなかっただろう。

 窓に映る私の物憂げな顔。まっすぐな黒髪に、緑色の瞳……私に冷たい高貴な婚約者とは、全く違う色味。

 ……私の婚約者は、オルレニ王国第三王子レンブラント・ミッドフォード。

 金髪碧眼の眉目秀麗で、学業も優秀、剣技もお強い。

 文武両道を併せ持つ完璧な王子様と言える方だけれど、婚約者の私には冷たく素っ気なく優しい態度をあまり見せない。

ーーーーというところが、とても良い。

 冷たい態度を貫く婚約者の姿が心に思い描かれて、思わずキュンとときめいた胸を押さえた。

 黒い馬車窓に薄く映っている私。その頭の上に浮かんでいるのは、大きな『80』の数字。

 イーディスには『自分の恋愛指数はどうなの?』と、聞かれなくて良かったと思う。

 親友の彼女には正直に答えても良いんだけど、説明がしづらくて……。

 だって、彼女は私と婚約者の関係について、冷え切っている関係だと思い込んでいるからだ。

 ……けれど、これは間違いなく、婚約者レンブラント様に向けての私からの恋心の数値だ。