不安に駆られる私を見透かすように、頬に添えられた掌が、下がりきった顔をゆっくりと持ち上げる。色素の薄いアンバーの瞳と交わったとき、微かに胸が疼いた。

瞬きせず、彼だけを見つめる双眸は、涙の膜を張っているかのようにゆらゆらぼやけ、視界が塞がっていくようで。

なにか言おうとしてる、のかな。

じ、と見つめた。一拍待つ間にも、ばくばくと心拍数は上がっていくばかり。
「どうしたの?」と語調を震わせながら聞いた直後、ハリのある声がつむじに吹き込まれた。


「彼女ですよ」


ぱちんっと今度は瞬きで返した。


「夢とか妄想にするのやめてください」

「〜〜っ」


こころの声、全部丸聞こえだったみたい。

「俺じゃ、不満ですかね」そう、彗は拗ねた態度で続けて問うた。
ふるふる首を左右に振った私は、舞い上がる気持ちを短い言葉の中にたくさん詰め込んで伝える。


「夢みたいでしあわせ、嬉しいですっ」

「すげーにやけ顔」

「むー…」


ほんのり赤を灯した頬を指の腹で挟まれた。

ふにと揺らして遊ぶ彗の口元には、優しげな笑みがのせられている。