掴んだ裾にきゅっと力を入れた。背の高い彼を見上げて続ける。


「もう少し、このままがいい」


お部屋に二人きりはよろしくないとわかっていながら、二人きりになろうとする悪い子。

伏し目がちに、頬を染めながら斜め下へ視線を逃した。

「言ってる意味、わかってますか?」低く掠れた声音が私を追いかける。こくり、と返事をせずひとつ頷いた行為が合図の如く、彼のかんばせがそっと肩口に埋まり白い首に唇が触れた。


「風邪のせいにしようかな」

「だったら、耳まで赤いのは」

「……………」

「お酒のせいにする?」

「……っ」


朱色に染め上がる耳朶を指の腹でなぞられる。瞼にかかる私の前髪を攫って、次は額へと触れるだけのキスが落ちた。受け入れるように目を閉じれば、また、頬にキスをした。

何これ。心臓が爆発しそうなくらい、ドキドキする。


「ふみさん」

私たち、付き合ってるんだよね……?こと、と首を横に倒した。

「は、はひ」

「あの」


あ、れ……?そもそも、付き合うの意味ってなんだっけ。「彼氏」とか「彼女」とか、深く考えすぎてむずかしくなってきた。


「(もしかしなくても、夢か妄想だったかもしれない)」