彗に向かって「おいしいです」と、続ける。今度はちゃんと『お行儀良く』を破ってしまった。
ほんとはね、お姉ちゃんからも言われたことがあるの。
「好きな人とご飯食べてるときに、大きな口開けちゃダメなのよ。お姉ちゃん、この間それで失敗したし、すっごく恥ずかしかったの。ふみは、間違ってもしちゃダメだよ?」
———お母さんには内緒ね
そう、眉尻を下げながら困ったように、ふんわり笑うお姉ちゃん。小指を優しくくっつけて約束した。
13歳の私には、お姉ちゃんや友達が話してくれる『好きな人』とか『恋』とか『ドキドキ』は、遠い遠い憧れの世界で、ちんぷんかんぷん。
首を傾げて「うーん…。そうなんだ(…そうなの?)」って、わかったフリして不思議に聞き返すだけ。
じゃあ…千景くんの前しか、いっぱいご飯食べちゃいけないんだ。どうしてか、気分がちょっとだけ落ち込んだのを覚えてる。
「チカちゃんにも、ね?」
「ヴッ。(さっそくバレてる)……誰とご飯行ったの?」
「秘密」
こっそり教えてもらえないかな、ダメかなあ。と思って質問したら、朗らかに笑って誤魔化されたんだ。残念。
そして今、私はお姉ちゃんの教訓を活かすどころか、全く同じことをしているわけであります。
淑女のふみ、さよならだ。
ほんとはね、お姉ちゃんからも言われたことがあるの。
「好きな人とご飯食べてるときに、大きな口開けちゃダメなのよ。お姉ちゃん、この間それで失敗したし、すっごく恥ずかしかったの。ふみは、間違ってもしちゃダメだよ?」
———お母さんには内緒ね
そう、眉尻を下げながら困ったように、ふんわり笑うお姉ちゃん。小指を優しくくっつけて約束した。
13歳の私には、お姉ちゃんや友達が話してくれる『好きな人』とか『恋』とか『ドキドキ』は、遠い遠い憧れの世界で、ちんぷんかんぷん。
首を傾げて「うーん…。そうなんだ(…そうなの?)」って、わかったフリして不思議に聞き返すだけ。
じゃあ…千景くんの前しか、いっぱいご飯食べちゃいけないんだ。どうしてか、気分がちょっとだけ落ち込んだのを覚えてる。
「チカちゃんにも、ね?」
「ヴッ。(さっそくバレてる)……誰とご飯行ったの?」
「秘密」
こっそり教えてもらえないかな、ダメかなあ。と思って質問したら、朗らかに笑って誤魔化されたんだ。残念。
そして今、私はお姉ちゃんの教訓を活かすどころか、全く同じことをしているわけであります。
淑女のふみ、さよならだ。