ふみへ。とってもとっても、残念な勘違をしていたようです。

『キスしたいな』とは、あまりにも浅はかで、不純なのではないでしょうか。

恋愛初心者が調子に乗りました。ごめんなさい。


きっと、彗の瞳に映る私は首筋までしっかり赤いと思うの。私のこころは、恥ずかしさでいっぱいだから、すぐにでも消えちゃいたい。

むに、と頬を抓った。

恋心を包むのは欲にまみれた下心。溶かそうとするのに、彼は私を離してくれなくて。


「ふみさんが考えてること、教えて?」

「彗には秘密。それと…あの、色っぽいのは禁止でお願いします」

「(顔真っ赤にして、目閉じてたくせに)」


気づかぬうちに、スコーンはお皿の上に戻っている。彗は端麗な顔に、つまらなさそうな表情を貼り付け、頬杖をついた。前髪の隙間を通って、無機質な瞳が色濃くなる様を、じ…と眺めたの。


「……あんた、俺を煽るのが上手ですね。どこで覚えてきたんです?」

「や、です。諦めて……?」

「“やだ”じゃないでしょ」


へんなの。わかってるくせに。

悪戯を仕掛けて、慌てふためく私の反応を楽しんでる。

そうやってわざと私を困らせるんだ。