4杯目のはちみつレモンを飲みながら、ぐすっと鼻を啜った。酔いが回っているのか、さっきからふらふらする。


「あ。ふみ、顔真っ赤。めっちゃ酔ってるわ」


周子ちゃんが、けらけらと笑い声を転がした。


「………(ゔっ。ぼうっとする。私なんて怒られたらいいんだ)」


腕に付けたアップルウォッチに視線を落とし、ほんのり染まった私のかんばせを覗き込んだ。


「ふーみ、スマホ貸して?」

「い や で す」

「って言うてもなあ。門限まで後1時間やし、こんなに酔ってたらお母さん心配するんちゃうかな?酔い覚ましてから帰ろうか?」


そうだ、お母さんが心配する。
ただでさえ、お姉ちゃんが自由奔放で困っているのに、私までこんな風になってしまったら、倒れるかもしれない…のは、おじいちゃんの方かな。

面倒なことは頼りになる弟に投げつけて、いっそのこと私もお姉ちゃんみたいに羽目を外そう、なんて悪い考えが浮かんだ。

…けど却下、親を困らせるのはダメだ。

私の理想とする“立派な大人像”が「ふみ、やめなさい」と忠告してくれたおかげで、頭が一瞬だけ覚めた。

そして気がつけば、周子ちゃんにパスコードを解除したスマホを渡していたのだ。吉とでるか凶とでるか。


「あっ。もしもし、すいません。水無瀬(みなせ) (けい)さんですか?ふみの友人の———」


ああ。よりによって電話をかけた相手が、絶賛ケンカ中の彼だなんて。

瞼がとろんと、夢に誘われて落ちていく———


のを、彗は許してくれなかった。


話し終えた周子ちゃんが「ふみに代わってほしいんやって」と、スマホを私の耳に当てた。

ひんやり冷たい感触が肌を刺激した。嫌な予感しかない。覚悟を決めましょう。