戸惑いを残して揺れる私の瞳と、千景くんの綺麗なアーモンドアイが、かちっと合わさる。


「熱あるの……?彗が迎えに来るから、一緒に乗って帰ろう?……やだ?」

「…バカふみ」


溜息混じりに低く掠れた声で私を覗き込んだ。

首筋を撫でる千景くんの体温があったかい。

やっぱり……熱にうなされてると思うんだ。
千景くん、大丈夫じゃないかも。


「お前、つまんねえ男に引っかかってんのな」

———だるいから帰るわ


私の提案は一蹴り、千景くんの心に擦りもしなかった。


𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡


千景くん帰宅後、扉を叩いて彗が迎えにやって来た。

ぱちっと視線が重なると、次は体がぶわっと甘い熱を宿す。「おはようございます」と、平然を装った挨拶をすれば、「…おはようございます」と無機質な声が返ってきたの。

いつもと変わらない雰囲気、少し寂しいけど良きです。

今日の運転も彗がしてくれるんだ、とスーツ姿に白の手袋を付けてる彼に見惚れていたら、目の前に影が被さった。


「あの御曹司、来てたんですね」

「!(千景くんと出会われてしまったんだ。いつの間に?さっき?)」


ぐしゃぐしゃっと髪を撫でられた。


「わわっ(せっかく可愛くできたのに)」

後ろで結った三つ編みが崩れちゃう。

「どうしましたか?」

「ん。余裕のない大人のヤキモチですよ」

「???」

大人の余裕で笑みを深めた彗に、胸がぎゅうっと苦しくて、トキメキ指数100を軽く超えた。

『好き』の気持ちは解禁したけど、私が毎日、彗に夢中なことは、まだ解禁しなくていいよね?