だらしなく眉尻を下げて言い終えると、満足そうに口元を緩ませた反面、触れていた掌は、どうしてか寂しげに剥がれてく。
千景くんを見上げて、遠慮がちに尋ねた。


「ほんとに怒ってない?」

「怒ってなんかねえよ」


言葉をなぞるように確かめると、千景くんはミルクティベージュの髪を耳へ掛ける。ロングピアスが微かに揺れて。


「俺が悪かった。ふみ、ごめんって」


甘いチョコみたいなブラウンの双眸が、優艶に私と重なるの。

今まで意地悪されても、謝られたことなんてなかったのに……素直カワイイ千景くんに、ふみのHPは削られてしまうところなのです。
それに、私のことで焦ってる千景くんは珍しいのだ。だから、この光景は目に焼き付けておかなきゃいけないの。

「ふふ」と、柔らかくて溶けそうな声が小さく転がり、千景くんに拾われる。


「笑うなや」


調子に乗ってしまい、怒られました。ほんのり耳朶を朱色に染めた千景くんに、右の頬を軽く掴まれる。昨日から通算すると、4回目の攻撃だ。


「いひゃい」

「餅みたい」

「ちっ、違うし。お帰りくださいっ」

「やだ。もう、ふみから離れねえよ」


え———…?