食事とお酒で満腹気味、それに加え睡魔の誘惑があっても、午後から講義が入っているし、周子ちゃんとランチの約束をしているの。

「お風呂入らなきゃ」両手で頬を叩いて眠気覚ましをする。頬を丸く膨らませたのは一瞬で、すぐさま立ち上がったのだ。


「相変わらず、ふみお嬢様は真面目に生きてんのな」

美麗なかんばせに、気怠げな表情をのせるのは、昨夜、はじめてのケンカをした幼なじみで、彼に捕まったのは、大学の準備を済ませて、自室に戻った瞬間だった。

ぱちりと、瞬きをして目の前の光景をなぞる。

黒のニットハイネックに、ダボッとしたベージュのワイドパンツを着こなしていて、何食わぬ顔で私のソファに座っているのだ。

耳の先でロングピアスが揺れるのを、じっと見入ってしまった。

視線がぶつかると、彼の濃いブラウンを纏う瞳が細くなり「ジロジロ見んなや」と毒を吐かれる。

お風呂も着替えもメイクも終わったから、ダッフルコートに、ぐるぐる巻きのマフラーをしてお迎えが来るのを待とうと思ってたのに。


「千景くん………?」

まぼろし?

「じゃねえよ」

「……(わ、心の声漏れてたのかな)」


じゃあ不法侵入だ。