「失礼いたします。ご気分はいかがですか?」


合図と共にメイドさんが顔を覗かせた。グラス半分に注いだお水と、ホワイトのフェイスタオルを手にしている。


「バッチリです。あの……昨日は迷惑かけてごめんなさい」

「迷惑だなんて、誰も思っていませんよ。ほろ酔い気味のお嬢様もとても可愛らしかったです」

「そ、ですか(あの状態はほろ酔いって言うのかな?)」


だらしなく眉を垂らして笑う私を前に、彼女は頷いた。曇り一点もない双眸を向けられると、否定をするのが心苦しい。

「へへ…」とお決まりの言葉ですり抜けて、サイドテーブルに置いてくれたお水を一口頂く。

軽い二日酔いも少しだけ楽になったような。
……あれ?
何か大切なことを見落としていると思うのは、気のせい……?では、ないよね。

見渡す視界に留まるのは、テーブルの端っこで倒れている拭き取りクレンジング。頬に触れてみると、ファンデの残りは指につかない。

それからもう一つ、不思議に思うことがあるの。

熟睡していた私は『いつの間にか』お気に入りのもこもこパジャマに着替えているではありませんか。


「お嬢様?」

「(ええと……クレンジングも着替えも、メイドさんがしてくれたんだよね?)」

「ふみお嬢様?どうかされましたか?」

「(酔い潰れたふみが、そんな器用な一人技できるわけないもん)」


それとも、彗が———…