「大好きに決まってるじゃないですか」


心の準備待ったなし。

「ええと」とか「と言うことは……?」などと、短い単語をいくつも宙に飛ばして、次のステップを踏もうとしてるのに、彗は無言で私の手首をいきなり掴んだ。

瞬き一つの間に、私の掌は彼の頬に添えられていた。すり…と彗がワザとらしく肌を密着させる。

伸びた前髪から覗く、アンバーの柔らかな瞳に見つめられるだけで私の顔は蕩ける。

逃げることなんてできっこない。


「お望み通りクビになってあげますね」

「うん」


言葉の隙間を縫うようにキスが降ってきた。

カシスオレンジに混ざってチョコの味がする。彗が食べてたのかな。甘いの好きだって、この間教えてくれたばっかりだから、覚えてるの。

「……んっ」と、吐息が溢れた途端、恥ずかしくなり瞳をぎゅうと瞑った。息が苦しいけど、甘々なキスはイヤじゃなくて、むしろ好きかもしれない。


「もっかい」


キスの合間、そう耳元で囁かれ深く口づけを繰り返した。甘い毒を注がれてる。

同時にお酒に酔いしれたツケが回ってきたのか、視界がぼやけるのです。

瞼をそっと閉じた瞬間眠りの淵に落ちていった。


「…………(あ。どうしよう。眠気が……ダメ、だめ。寝ちゃ、いけないのに)」


睡魔に負けてしまったのである———…