甘い微炭酸のアルコールのおかげで、眠りに落ちていたらしい。懐かしい夢に胸がくすぐられて、目が覚めた。

今も、体がふわふわする感覚は抜けず、頭はぼうっとしている。

瞼を閉じた向こう側では、周子ちゃんと奏太くんの賑やかな声音が耳を刺激する。彗に私を引き渡す係を、今からじゃんけんで決めるんだって。

二人の行方を薄く開いた瞳の先で見守りながら、テーブルに右側の頬を預けた私は「もう少しだけいいかなあ」と、夢の続きを神様にお願いした。

ほらまた、瞼が重なってく。


「やった!勝った!」

「え、ヤダよ。オレあの人めちゃくちゃ怖いんだもん」

「何言うてるん奏太くん。日本犬やと思えばいいんよ。秋田犬か柴犬」

「そんなカワイイ犬種じゃないでしょ。シェパードじゃない?」


二人の例え話に、だらしなく結んだ唇の端が、ふにゃと緩んだ。
「うんうん。柴犬だよ、可愛いもん」と、周子ちゃんに同調するみたく小さな寝言を転がしたときだ。横からふわりと清涼感のある香りに、熱が込み上げた。


———おい、ふみ

「……ん、ぅ」

「ふみ」

「………………」

「起きろや」


“紛れもなく”千景くんだ。

驚いて「はいっ」と声を上げる。「声でかすぎだろ」千景くんがフッと笑みを浮かべた。


「おはよ」

「…………(どうして、千景くんがいるの?これも夢なのかな。夢であってください)」