び……びっくりした。
あまりの顔の良さに、完全にひれ伏すところだった。「はい、お願いします」なんて、心で思っても口にしたらダメです、危険すぎる。


「………っ(あの人、苦手かも)」


いくらなんでも、お子様には刺激が強いよ———


悪態をついた水無瀬さんが帰った夜、私はお姉ちゃんを繋ぎ止めて、家族会議を開きました。
きっちり正座した私と、のほほんと寛ぐお姉ちゃんの構図で、緊張感が全く漂わない……。

「えいっ!」メモ帳に書き残した《お願い》をお押し付けた。内容は以下の通りです。


・ボディガードを別の方に代えてほしいです
千景(ちかげ)くんに似ているので、いつか水無瀬さんと私の立場が逆転します、代えてほしいです
※千景くんは私の元婚約者です
※「千景くんに似ている」問題が一番の重要事項


どうでしょうか?と、首を横に傾けて伺いを立てたけど、お姉ちゃんは不思議そうに質問を投げた。


「どうして?ふみは、水無瀬さんのこと嫌い?」

ふるふると頭を振った。

「子どもの頃から、千景くんに意地悪されてるの知ってるでしょ?……似てるから苦手」

「チカちゃんに似てるなら、可愛いじゃない。お姉ちゃん、このままで良いと思うな」


と、有無も言わさない天使の微笑みで、却下されてしまいました。

心の中で「ふみの頭ん中、それしかないのな」と千景くんの呆れた声が落ちてきた。