「来ないでください!」
彼は近道をいくつも知っているのか、先回りしてエントランスで待ち構えていた。
「怪我をしている。手当てをしないと」
「お願いです……見ないでください」
こんな血塗れの姿。
一番見られたくない。
「嫌われてしまうと思っているのかい?」
「見ないでください! お願いです。お願いですから……」
「ラローシャ」
ハリット王子は震える私を強く抱き締めた。
「大丈夫。君を嫌いになったりしない。だから怪我の手当てをさせてほしい。君が傷つくところは見たくないんだ」
勝手な男だと思った。
勝手に私のことを好きになって、勝手にキスをして、勝手に抱き締めて。
色恋など似合わないと言っているのに。