これは嫌がらせで言っているのだろう。
アルディーア公爵は彼女を止めたが、ミレットはさらに続ける。
「私なんて小さくてか弱くて、剣もとることもできないのよ。どうしてマイケル様は私をお選びになったのかしら」
この舞踏会に至っては、私は場違いで肩身が狭い。それは間違いがなかった。
アルディーア公爵は困った様子でミレットに話をしている。その間に去ったほうが良さそうだ。
「ラローシャ! 探したよ」
ハリット王子がタイミング良くやってくる。
ミレットは王子を見ると、上目遣いで挨拶をしてきた。
「はじめまして殿下。私、ミレット・スーバルと申しますぅ! お会いできて光栄ですわ!」
「はじめまして。ミレット。よく来てくれた」
ハリット王子はにこやかに笑って返すと、ミレットは嬉しそうに微笑み返した。
「ラローシャ様にご用事ってことは、まさか護衛のお仕事ですか? あぁ、わかりましたわ! ラローシャ様は本当は護衛のお仕事があるから、ここへ来られたのですわよね? そうだと思いましたわ! だってここへ好んでダンスをされるイメージがありませんもの。どうやらお相手もいないようですしね」
もういい加減にしてくれ!
「すまないが、気分が悪い。失礼する」
私はバルコニーの手すりをぐっと握り、風に当たった。今宵の風はどこか冷たくて、くるんじゃなかったという思いを助長させる。
ここは戦場よりも孤独を感じる。
「ラローシャ! 気分はどうだい?」
私を追ってきたのは、アルディーア公爵だった。
「ミレットが失礼なことを……すまない」
「失礼? とんでもない。私が雄々しいのは間違いないことだ。あなたが求めた女性像はミレットだったのでしょう? 私とは正反対で、良かったじゃありませんか」
「君はいつもそうやって強がってばかりだ」
「強がってばかり? ご冗談を! 私は強いんです! この国を守る騎士団長なのですから」
アルディーア公爵は残念そうに私を見つめる。
「それならずっとこの国を一人で守り続けてください。騎士団長様」
彼はそう言うと、バルコニーから出ていった。