彼はそう言って、私の手首を握っている手を見つめた。

…?なに


「あのさ、」

「……」

なんでなにも言わないの?


彼はゆっくり私の手を引いて、自分の体に近づけた。


私の身体も彼に近づいていく。


気づけば、彼の腕の中にいた。



「…!?え、ちょ」

彼から離れようとする。

すると、そうはさせないと言わんばかりに、彼は私の頭に手を置いた。


全身が気づけば彼に包まれていた。

心臓と胸が異常な速度で動く。言葉にできない気持ちも溢れ出てくる。



それでも、

「やめてっ」

できる限りの力で彼を押して、私はすぐに階段を下った。