3分程度の短いやりとりで龍牙は電話を終え、口元を上げた。

『お前ら喜べ。蒼汰が釈放されるぞ』
『マジですかっ? よかった……』

 気の抜けた拓はその場にへたり込み、晴と洸も安堵して拳を突き合わせた。

『んじゃ、俺は蒼汰を迎えに行ってくる。晴も一緒に行くか?』
『はいっ!』

晴は跳ねるように椅子から立ち上がる。蒼汰は相棒だ。早く蒼汰の顔を見て話がしたい。
龍牙が洸を手招きする。

『洸、お前にはまた連絡入れる』
『はい。お気をつけて』

 洸達に見送られた龍牙と晴は蒼汰のいる新宿西警察署に向かった。

 運転席でハンドルを握る龍牙の左手薬指には結婚指輪がある。高校時代からの彼女と結婚した龍牙は今では一児の父親だ。

『学校はどうだ?』
『楽しいっすよ。期末テストで赤点まみれで、追試に受からないと夏休みがなくなるピンチに直面していますけど……』
『まぁ赤点も青春のうちだな。俺も高校の頃は授業サボってばかりだった。アキに無理やり学校まで引っ張ってかれたよ』

 アキは龍牙と共に黒龍創設メンバーで黒龍初代No.2。晴はアキとは面識がないが、倉庫の壁には黒龍初代メンバーのスナップ写真が飾られていて、アキの顔は写真でのみ知っている。

『俺もすっげー頭のいい友達がいて、さっきまでそいつに勉強教わっていました』
『そいつは勉強の邪魔しちまったな。本当はお前に蒼汰の件を知らせるべきか迷ったんだ。晴は黒龍を抜けて普通に学生やってるからな』
『逆に知らされないままの方が嫌です。蒼汰は俺の相棒なんで。蒼汰の危機は俺の危機です』

 相棒、それは悠真達バンドメンバーや黒龍のメンバー、隼人達とも意味合いが違う。

バンドに集中するために黒龍を抜けることを晴は真っ先に蒼汰に相談した。絶交を覚悟で打ち明けた晴の夢を蒼汰は真剣に聞き、応援すると言ってくれた。

 バンドメンバーや黒龍のメンバーは仲間、隼人達は友達。
蒼汰と晴は二人でひとつ、晴と蒼汰を合わせて最強になる唯一無二の相棒だ。

そう、かつての龍牙とアキのような。