未成年だから警察にバレたらマズイと止めたのだが、こんなことならあの時もっと強く止めておけばよかった。

『当然、クラブにいた蒼汰もサツに事情を聞かれる。身体検査を受けたけど蒼汰はクスリを持っていなかったし、尿検査でも反応はなかった。だけど俺らはサツからすれば不良の塊だろ? 黒龍にクスリご法度の掟があっても族のNo.2がクスリの売買のあるクラブに出入りしていたんだから疑われても仕方ないんだ』
『そこでサツに俺が呼ばれたってこと。俺は黒龍の顧問弁護士でもありお前らの保護者代わりのようなものだからな』

 龍牙は灰皿に煙草を捨てて長い脚を組んだ。まだ28歳ながら堂々とした佇まい。龍牙がそこにいてくれるだけで安心感が生まれる。

『蒼汰がクスリをやった証拠がない以上、証拠不十分で俺からもサツに蒼汰の釈放要求をしているんだが、これがなかなか難しくてな。ただでさえ未成年が酒を出す店に出入りしていたことで心証が悪い上に……』

龍牙が眉間にシワを刻む。洸も同じく険しい表情をしている。晴は思考をフル回転させた。

『蒼汰がハメられたってことは蒼汰がクラブに行ったのにも裏があるんですか?』
『蒼汰と一緒にクラブにいた女が逃げたんだ』

晴の問いかけには洸が答えた。

『女?』
『今月初めに蒼汰にできた女だ。俺達も女のことはエリカって名前しか知らねぇけど、クラブに居たときに逆ナンされたらしい。今回ガサ入れされたエスケープもエリカに誘われて一緒に行ったと蒼汰は話してる』
『そのエリカが蒼汰をハメたってことか?』

今度は龍牙が話を引き継いだ。

『サツのガサ入れの日、蒼汰はエリカに誘われてエスケープに行った。だが、ガサ入れ直前にエリカはクスリの入るバッグを蒼汰の隣に置いて店から消えたんだ。連れの女はガサ入れ前に消え、女の荷物から違法薬物が見つかった。蒼汰がクスリをやってないとどれだけ主張しても警察は蒼汰を疑う。アイツにとってはまずい状況なんだ』

 エリカは蒼汰を薬物取引のあるクラブにわざと連れて行った。そうだとすれば絶対に許せない。

『エリカの素性はわからないんですか?』
『エリカの残したバッグからはクスリ以外は財布も携帯も身元を示すものは何も入っていなかったそうだ。最初からクラブに置いていくために用意したんだろう。蒼汰に名乗っていたエリカって名前も偽名かもな。蒼汰の携帯に登録されたエリカの連絡先も繋がらないようになってる。サツもクスリを所持していたエリカを捜し回ってるが……。お、噂をすれば。……おう』

 龍牙の携帯が着信を鳴らし、彼は電話に出た。沈黙する晴達は龍牙の電話が終わるのを待った。