周りには木村先輩の他に高園先輩、渡辺先輩、緒方先輩も集まっている。それぞれ椅子に座って、私が泣き止むまで何も言わずに一緒に居てくれた。

とても優しくて穏やかな時間。それはこのまま彼ら四人の人柄を表している。
先輩達が居てくれて本当によかった。

「桃子ちゃんはどうなるんでしょう?」

 泣き止んだ私は鼻声に顔を赤らめつつ木村先輩に話しかけた。開いた窓から吹き込む風を受ける木村先輩の前髪が風で揺れる。

『賭けの元締めだけでなく援交までやっていたとなれば退学かもな』
「桃子ちゃん学級委員もやってるしっかり者だったんです。そんなことする子には見えなかったのに……」
『だからだよ。これは桃子の兄の清孝が言っていた話だが、清孝は一流大学を望む親の期待が重くてストレスを発散するために傷害事件を起こして退学、受験戦争に脱落した清孝に代わって今度は親の期待すべてが桃子に向いたらしい』

 桃子ちゃんの家の事情は初めて聞いた。私は桃子ちゃんについて知らないことだらけだった。

「親の期待を背負うってかなりのプレッシャーですよね」
『桃子もそれがキツかったんだろ。学校ではしっかり者の学級委員、家では親の言うことを聞くいい子を演じていた。援交したり賭けを仕切ることがアイツのはけ口だったのかもな。やり方は間違ってるが』
『隼人も去年は荒れて手に負えなかったから似たようなものだけどなー』

木村先輩の話に渡辺先輩が口を挟む。木村先輩が苦笑した。

『俺も似たようなものか。でも俺にはお前らがいてくれたからよかったよ』
『うわっ……! 隼人が柄にもなく素直で気持ち悪っ。明日は台風か? 嵐か? 大雨暴風警報出るかっ?』

緒方先輩が茶化してるけど四人みんな楽しそう。

「木村先輩、高園先輩、渡辺先輩、緒方先輩、本当にありがとうございました。先輩達に出会えて私は幸せです!」

 立ち上がって四人の先輩に感謝の気持ちを込めて頭を下げる。