力が抜けた桃子ちゃんから木村先輩がハサミを抜き取る。
桃子ちゃんがまた笑い出した。壊れたロボットみたいな狂った笑い声に鳥肌が立つ。

「やっぱりあんた達が生徒会になったのは誤算だった。杉澤のトップ4とか言われて騒がれて、だいぶ目障りだったけど。ここまで邪魔者になるなら最初からあんた達を潰せばよかったなー」

 ビリビリに切り裂いたノートを掴んだ彼女が私めがけてノートを投げつけた。渡辺先輩が腕を引いて避けてくれたおかげでノートは私には当たらず床に落ちる。
散ったノートの切れ端は木村先輩が拾い集めてくれた。

『俺達のことはどう思ってもらってもいいが、増田さんには何か言うことはないのか?』
「別に。悪いことしたとは思ってないもの。あんた達の携帯が職員室に繋がってるなら、どうせ私の処分は決定でしょ? 今日のところは帰らせてよね」

 教室を横切って入り口に向かう桃子ちゃんの背中に向けて、私は叫んだ。

「桃子ちゃん! 私、桃子ちゃんのこと友達だと思ってたよ。今だって……友達だと思ってる」

私の言葉に桃子ちゃんは足を止めたけど彼女が私を見ない。それでも言わずにはいられない。

「馬鹿でもお人好しと思われてもいい。私は桃子ちゃんが大好きだよ! 桃子ちゃんは最初から私を友達だと思っていなかったかもしれないけど、私は桃子ちゃんと一緒にいて楽しかったから……だから……」

 流れる涙を拭うこともせずに気持ちを叫んだ。桃子ちゃんは一度も私を見ることなく何も言わずに教室を出ていった。

 いつの間にか木村先輩が隣に立っていた。

『友達だと思ってる、か』
「馬鹿ですよね。桃子ちゃんは私を友達だとは思ってなかったのに、まだ友達だと思ってるなんてお人好しが過ぎますよね」
『確かにお人好しが過ぎるな。でも馬鹿でお人好しでもいいじゃん? それが増田奈緒なんだから。最後まで戦ったな』

私の頭を撫でてくれる木村先輩の手つきにしゃくり上げて泣いてしまう。