『まずいな。隼人がキレた』
私の肩を支える渡辺先輩が呟いた。彼がキレたと表現した木村先輩は私にもわかるくらいに殺気立っていた。
『さっきから何なんだよお前。手を抜いてやってる? 笑わせんな。じゃあ、あんたが手を抜かなければ1位になれんのか?』
どす黒いオーラを放つ木村先輩が桃子ちゃんとの距離を詰める。
先輩の迫力に負かされた桃子ちゃんが後退する。彼女の脚が机の脚に当たった。
「あ、当たり前じゃないっ! 私が本気出せば普通に学年で1位とれるんだから!」
『へぇ。じゃあやってみろよ。実力で1位とってみろよ。でもな、もしあんたがテストで学年1位になったとしても人間として最低なことに変わりはない』
桃子ちゃんが持っていたハサミの刃先を木村先輩に向けるが、木村先輩はかまわず桃子ちゃんに近付いていく。桃子ちゃんは前を木村先輩に、後ろを高園先輩に挟みうちされた。
「あんたのように女にだらしない男に最低呼ばわりされたくないっ」
『確かに俺は女にだらしねぇよ。そこは否定しない。だけど俺は友達のフリして近付いて、信じてくれた友達を裏切る真似は一度もしたことないね。人としてあんたは最低だ。増田さんはあんたを信じてたんだよ。彼女がどれだけ傷付いたか、わかるか?』
桃子ちゃんが持つハサミが震えている。木村先輩が桃子ちゃんの腕を掴んで引き寄せた。
『せっかくあんたが援交してることは黙っててやろうと思ったのにな?』
木村先輩が桃子ちゃんの耳元で囁いたセリフは私にも聞こえてきた。桃子ちゃんが声にならない小さな悲鳴をあげる。
「あの……。援交って援助交際のことですよね?」
『うん。兵藤桃子は援交して身体を売ってた。隼人もこれは増田さんが知るにはショックな事実だから黙っていようとしていたんだよ。だけどこの切り札持ち出さないとダメだったみたいだ』
渡辺先輩が耳打ちして教えてくれた。私には黙っていようとしてくれた木村先輩の気遣いが嬉しかった。
木村先輩が桃子ちゃんの後ろの高園先輩と目を合わせる。
『悠真、お前の携帯も繋がってる?』
『もちろん。兵藤さん悪いね。俺達四人分の携帯、実は職員室の電話に繋がっているんだ。俺達が教室に入ってからずっとね。職員室で先生達がこの会話を聞いてるよ』
木村先輩と高園先輩の追い討ちは桃子ちゃんにも私にも衝撃的だった。携帯が職員室の電話に繋がってる……先輩達の用意周到さは凄い……!
私の肩を支える渡辺先輩が呟いた。彼がキレたと表現した木村先輩は私にもわかるくらいに殺気立っていた。
『さっきから何なんだよお前。手を抜いてやってる? 笑わせんな。じゃあ、あんたが手を抜かなければ1位になれんのか?』
どす黒いオーラを放つ木村先輩が桃子ちゃんとの距離を詰める。
先輩の迫力に負かされた桃子ちゃんが後退する。彼女の脚が机の脚に当たった。
「あ、当たり前じゃないっ! 私が本気出せば普通に学年で1位とれるんだから!」
『へぇ。じゃあやってみろよ。実力で1位とってみろよ。でもな、もしあんたがテストで学年1位になったとしても人間として最低なことに変わりはない』
桃子ちゃんが持っていたハサミの刃先を木村先輩に向けるが、木村先輩はかまわず桃子ちゃんに近付いていく。桃子ちゃんは前を木村先輩に、後ろを高園先輩に挟みうちされた。
「あんたのように女にだらしない男に最低呼ばわりされたくないっ」
『確かに俺は女にだらしねぇよ。そこは否定しない。だけど俺は友達のフリして近付いて、信じてくれた友達を裏切る真似は一度もしたことないね。人としてあんたは最低だ。増田さんはあんたを信じてたんだよ。彼女がどれだけ傷付いたか、わかるか?』
桃子ちゃんが持つハサミが震えている。木村先輩が桃子ちゃんの腕を掴んで引き寄せた。
『せっかくあんたが援交してることは黙っててやろうと思ったのにな?』
木村先輩が桃子ちゃんの耳元で囁いたセリフは私にも聞こえてきた。桃子ちゃんが声にならない小さな悲鳴をあげる。
「あの……。援交って援助交際のことですよね?」
『うん。兵藤桃子は援交して身体を売ってた。隼人もこれは増田さんが知るにはショックな事実だから黙っていようとしていたんだよ。だけどこの切り札持ち出さないとダメだったみたいだ』
渡辺先輩が耳打ちして教えてくれた。私には黙っていようとしてくれた木村先輩の気遣いが嬉しかった。
木村先輩が桃子ちゃんの後ろの高園先輩と目を合わせる。
『悠真、お前の携帯も繋がってる?』
『もちろん。兵藤さん悪いね。俺達四人分の携帯、実は職員室の電話に繋がっているんだ。俺達が教室に入ってからずっとね。職員室で先生達がこの会話を聞いてるよ』
木村先輩と高園先輩の追い討ちは桃子ちゃんにも私にも衝撃的だった。携帯が職員室の電話に繋がってる……先輩達の用意周到さは凄い……!