助けを呼ぶこともできずに私は三人の女の子に囲まれて裏庭に連れて来られた。
木々の覆い茂る裏庭には土を踏みしめる私達の足音以外は何も聞こえない。下校する生徒達も正門から出ていくから裏門に近い裏庭は誰も通らない。

「あんたさぁ、うざいんだよね」

 巻き髪の子が髪の毛先をいじりながら刺々しい言葉を吐いた。

「一年の時は順位表に名前なかったくせに二年でいきなり2位とっちゃって。あんたのせいで今回の賭け、私らが負けちゃったじゃない」

今度は背の高いショートヘアーの女の子は私を見下ろす。彼女達が何を言ってるのか話がさっぱりわからない。

「えっと……賭けって……?」
「あははっ! あんた何も知らないのぉ?」

黒髪ロングヘアーのお嬢様のような子が笑い出した。見た目は大和撫子なのに目付きが怖い。

「テストの順位で私達は賭けをしてるの。この前のテストで1組の多賀康平か4組の北川朱美のどっちが1位になるか。一年の時は毎回その二人がトップ争いしてたからね」

賭けって人の成績で? 信じられない……

「私らの予想は朱美が1位で多賀が2位ってことで賭けてたのに順位表見てびっくりだよねー。朱美は1位だったけど多賀が3位で。朱美と多賀の間にあんたがいるんだもん」
「2位、増田奈緒。は? 増田奈緒って誰ですかー? って」
「あんたが2位になったおかげで私達賭けに負けたの。私達と勝負してた奴らが今回は多賀は1位にも2位にもなれないって踏んでたからあっちの予想が当たっちゃって」
「ひとり二万ずつあっちに支払うことになっちゃってさぁ。ねぇ、どうしてくれるの?」

三人に詰め寄られて私はたじろぐ。巻き髪の子が私の胸ぐらを掴んだせいで制服のリボンが外れて地面に落ちた。

「そう言われても……」

 この人達は人の成績で賭け事をして負けた理由を私のせいにしている。私が責められるのは理不尽だ。
でも臆病者の私は反論もできない。私の物を盗んで捨てたり嫌がらせもこの子達がやったの?

黒髪ロングの子が私のカバンをひったくった。

「とりあえず今いくらある?」
「え?」
「金だよ! 賭けに負けて私達金欠なわけ。だからあんたが慰謝料として支払ってよ」

ショートヘアーの子が私のカバンから財布を抜き取った。慰謝料って意味がわからない。
私はこの人達に何もしてないのに!

「あ、あの……」
「なに? 文句ある?」

私の胸ぐらを掴む巻き髪の子に睨まれて怖くて何も言えない。お小遣いもらったばかりなのにこんな理不尽なことで恐喝されてお金盗られて最悪だ……!