公園を出た二人は住宅街が並ぶ道に入る。渡辺の家は麻衣子の家の二軒隣。
麻衣子、隼人、渡辺は幼稚園から今通っている中学校までずっと一緒に過ごしている幼なじみだ。

『進路希望調査、月曜提出だっけ。麻衣子は高校どこ受ける?』
「第一志望は聖蘭《せいらん》学園。ランク高いから受かるか心配」

 まだ中学三年の5月、もう5月。そろそろ志望校を決めて受験に備えなくてはいけない時期だ。

『聖蘭か。じゃ、高校からは別々になるな』
「亮はどこ受けるの?」
『俺は杉澤学院狙い』
「うわっ! 杉澤って偏差値ランクトップじゃない。でも亮は頭いいから納得」

どこかの家から美味しそうなカレーの匂いが漂ってくる。自分の家の夕御飯は何だろう?

『隼人もたぶん杉澤学院だぜ。二年の時に高校は杉澤にするってアイツ言ってたし』
「ふーん。隼人も杉澤ねぇ。二人とも受かればまた同じ学校だね」

 杉澤学院高校は杉並区にある東京都の偏差値トップクラスの高校だ。麻衣子の第一志望の聖蘭学園は渋谷区の女子校。