高校二年の10月下旬のある日。屋上で昼休みを四人で過ごしていた時のこと。

『なぁ隼人。お前、生徒会長やれ』

 悠真が今朝配られた校内新聞を隼人に放り投げた。隼人は新聞には見向きもしないで寝そべって雑誌を読み耽っている。

『やだよ。面倒くせー』
『なになに? 隼人、生徒会長やんの?』

隼人の隣で寝そべっていた晴は悠真が放り投げた校内新聞を広げた。亮も新聞を覗き込む。

 校内新聞の一面には来年度の前期生徒会役員を決める生徒会役員選挙の告知が載っていた。選挙は一ヶ月後、候補者が多数出た場合は全校生徒の投票での多数決で決まる。

出馬するには立候補か推薦のどちらかになるが、悠真は隼人を会長に推したいらしい。

(隼人が生徒会長……似合うけど中学の時に一度やってるからやりたがらないだろうな)

 亮は隼人を見た。彼は相変わらず雑誌から目をそらさず、生返事を返すだけ。

『生徒会長なんてあんなクソ忙しいもの二度とやるか』

亮の予想通り隼人はやる気ゼロだ。悠真は気を悪くした素振りもなく、晴から校内新聞を取り上げた。

『わかった。じゃあ俺が会長やるから隼人は副会長な』

 いつの間にもらってきたのか、悠真は白紙のエントリーシートの会長の欄に自分の名前を、副会長の欄に隼人の名前を綺麗な字で記入した。

『だから俺はやらないって……』
『会長じゃなくて副会長ならどう?』

悠真の不敵な笑みに、彼以外の三人は嫌な予感がした。悠真のその顔はなにかを企んでいる時の悪い顔だ。

『……まぁ副会長なら……いいけどさ……』

隼人と悠真のにらめっこも長くは続かない。隼人は諦めたように溜息をついた。

(悠真って何者!? 隼人に勝てるのはナツミ姉ちゃんだけだと思ってた……)

 それから日が経ち11月下旬。生徒会役員選挙当日。
例年の選挙もそうだったが、生徒会選挙なんてものは人気投票と同じだ。しかも今年は会長に高園悠真、副会長に木村隼人。

杉澤学院高校のツートップの立候補に他に会長や副会長に立候補や推薦された生徒は皆、勝ち目なしと悟って辞退。

 色々と波乱の生徒会選挙を終えて、無事に高園生徒会長と木村副会長が誕生、来年度の前期生徒会が発足した。