綺麗に磨かれたフローリングの床。壁には海外ミュージシャンのポスターやコラージュが貼られ、ギターとベースが掛けられている。
床を一段高くしたスペースにはマイクスタンドとドラムセット。ここが音楽スタジオだと一目瞭然だった。

部屋の中央に置かれた黒い革のソファーには隼人と晴と同じ杉澤学院高校の制服を着た男が座っている。この物悲しい旋律は彼が抱えるギターから奏でられていた。

 ギターを弾く手を止めた彼が顔を上げて二人を……いや、正確には晴の一歩後ろにいる隼人だけを見た。

男を綺麗だと思ったことは隼人の人生で一度もない。しかしギターを弾くこの男を形容する言葉は綺麗としか言いようがない。
彼が女っぽいと言うのではなく、気品のある洗練された美が彼には備わっていた。

『……晴。そいつは?』

一瞬で相手を惹きつけ魅了する視線。物静かだが圧倒的な存在感を放つ男の雰囲気は凡人とは言い難い。とてもじゃないが同じ高校に通う高校生には見えなかった。

『同じ学校の木村隼人。木村、こっちはさっきサトルさんも言ってた高園《たかぞの》悠真《ゆうま》。俺らと同じ杉澤の二年でクラスは4組。ちなみに俺は5組なー』

 杉澤学院高校は二年生から特進クラスと普通クラスに分けられ、特進はさらに文系2クラス、理系2クラスに分けられる。
全7クラスあるうちの特進文系が1~2組、特進理系が3~4組、5~7組が普通クラス。

隼人は特進文系で1組、晴は普通クラスの5組、幼なじみの渡辺亮は4組で高園悠真と同じクラスだ。

『高園です。よろしく』

隼人の怪我を特に問い質すこともなく高園悠真は端整な顔を緩めて微笑んだ。

『ああ。俺は木村隼人。よろしく』

 自己紹介を交わす隼人と悠真を晴が不思議そうに眺めている。

『お前ら、お互いのこと知らなかったのか? ある意味、お前ら二人が揃ってるのってすげぇなぁって俺なんかは思ったんだけど』

 晴が不思議がる意味が隼人も悠真もわからない。