赤髪の仲間が隼人を羽交い締めにし、隼人の顔に赤髪の拳が飛んでくる。

(痛ってぇなぁ。一対複数は卑怯だろバカ高野郎……)

赤髪が笑いながら隼人の髪を鷲掴みにした。

『お前こんなナリしてっけど成績はトップクラスでスポーツもできる優等生くんなんだってな。生徒指導には引っ掛かるくせに、教師からの信頼もあって女子からは杉澤の帝王って呼ばれてるらしいじゃん? だから知らず知らず恨み買ってたりするんだぜ。モテモテで完璧な奴は大変だなぁ』

 それまで保っていた隼人の平常心の糸が切れた。優等生だの完璧だのと、そう言われることが彼は最も不愉快だ。

 羽交い締めにされて腕を拘束されている隼人が使える武器は脚のみ。隼人は右足で赤髪の腹部を思い切り蹴り上げた。

サッカーで鍛えた隼人の脚力で蹴られた赤髪は相当なダメージを受けたようで腹を押さえてしゃがみこんでいる。

赤髪が蹴り飛ばされたことで逆上した仲間が隼人を乱暴に突き飛ばす。突き飛ばされた隼人は軽々と受け身をとり、怒りの形相でこちらに向かってくる赤髪の拳を避けた。

 喧嘩は好きじゃない。一対複数じゃ勝てる気はしないがやられっぱなしは性に合わない。
小学生の時に父親に無理やり習わされた拳法と合気道がこんな時に役立つとは。

 赤髪の拳を避けて顔面パンチを食らわせる。読者モデルをしている隼人には顔は商売道具。顔を殴ってくれたお返しだ。

赤髪の仲間達にも蹴りを入れ、しばらく乱闘が続いたが人数的に分が悪い。
隼人は一瞬の隙を突かれて動きを封じられて腹を殴られた。激しく咳き込み、電信柱に背をつけて崩れ落ちる。

 誰か加勢が欲しかった。渡辺亮や友達の陽平を呼びたかったが彼らは部活中だ。それに試合が近い彼らに怪我はさせられない。

応援を呼ぼうにも携帯電話はカバンの中だ。乱闘で暴れた隼人のカバンは道に放り出されている。