チームメイトの隆太からカラオケの部屋番号がメールで送られてきた。定食屋で監督と別れて、カラオケ店に向かった隼人はロビーのエレベーターの前で隆太と合流した。

『監督と話ついた?』
『ああ。戻らないって言ってきた』
『……そっか。ま、今日は騒ごうぜ。皆、隼人を待ってる』

 隆太は一瞬悲しげな顔を見せたがすぐに明るく笑って隼人の背中を叩く。気遣ってくれる隆太には申し訳ない気持ちになるが、こればかりはもう決めたことだ。

 カラオケルームは二十五人が余裕で入れる大部屋だった。隼人は皆の勧めで今日の主役、京介の隣に座らされた。

京介は変な被り物を被らされて口元には付け髭、金色の蝶ネクタイまでつけている。主役と言うよりは罰ゲームをやらされているような有り様だ。しかし本人は至って楽しそうで、楽しげに仲間達と騒ぐ京介を見ているのが隼人も楽しかった。

 京介は隼人がサッカーを辞めたことについて何も言わない。隼人が同情や慰めを求めていないことを京介はよくわかっている。
互いが決めたことに口出しはしない。それが彼らの友情だ。

 4時間カラオケで騒いで、あっという間に夕方になっていた。数人が解散して残ったメンバーでファミレスに入り、少し早い夕食の時間を過ごす。

 ファミレスを出てまた数人と解散して最後まで残ったメンバーは隼人と京介、隆太、あと五人の八人。小学生から一緒にサッカーをやって来たいつものメンバーが最後まで残った。

隼人達はまだ帰る気もなくゲームセンターに入り浸る。適当にいくつかゲームをやり、だらだらと時間が過ぎていった。でもこんな無意味な時間がたまらなく意味があって楽しいと感じる。