隼人はフォワードのストライカー、京介は攻撃的ミッドフィルダー。隼人と京介のコンビネーションは抜群だったが相手チームも粘って試合はPK戦に。

隼人も京介もPKのキッカーに選ばれ、二人ともシュートを決めて試合は隼人達のチームが勝った。
チームが勝利したことと、今日の自分の動きに満足していた隼人は協会から選ばれるのは自分だと自信があった。

 そして運命の試合から1週間後、サッカー協会から選ばれた留学生として名前を呼ばれたのは木村隼人ではなく……彦坂京介。
悔しいなんてものではなかった。どうして自分じゃなくて京介なんだと、何度も思った。

 誰が選ばれても文句は無し。わかっている。京介と約束したから。だけどもし、選ばれたのが京介ではなく別のチームメイトだったらもしかしたらめちゃくちゃ文句を言っていたかもしれない。

負けたのが京介なら文句はない。でも京介だからこそ悔しかった。
小学二年からずっと一緒にサッカーをやって来て、毎年夏休みにあるサッカー合宿ではいつも夜に抜け出してコンビニで買い食いしたり、二人でバカなことをして遊んでいた。

学校は違ってもサッカーで繋がっている京介とは学校の友達や幼なじみの渡辺亮とはまた違った絆があった。

 親友でチームメイトでライバル。だからこそ一番負けたくない。一番負けたくない奴に一番負けたくないもので隼人は負けた。

京介には笑って『おめでとう』と言えたのはせめてもの強がり。だけど、どうしても自分と京介の違いが知りたくて、留学に自分ではなく京介が選ばれた理由が知りたくて、隼人はサッカークラブの監督にどうしようもない思いをぶつけた。