数分してペットボトルの飲料水を抱えた翼と朝陽がコートに戻って来た。

『美月?』
「やっと来た。待ちくたびれました」

戻って来た朝陽は相当驚いていた。彼は裏返った声で少女の名前を呼んだ。

『お前こんなとこで何してるんだ?』
「はぁ? 朝陽がなかなか帰って来ないから朝陽のお母さんに頼まれて迎えに来てあげたの。今日は皆でご飯食べに行くから5時までに帰って来てって言われたの忘れたの? もう5時半だよ?」
『ああ! ごめん忘れてた』

 朝陽と少女のやりとりはまるで隼人と亮、幼なじみの麻衣子とのやりとりに似ていて、亮も隼人も微笑ましくなる。

「お母さん達待ってるんだから帰るよ」
『わかったよ。ちょっと待って。翼くん、渡辺さん、隼人さん、俺先に帰りますね。うるさいのが迎えに来ちゃったんで……』

買ってきたジュースを隼人と亮に手渡す朝陽は言葉とは裏腹に少女の迎えが嬉しく、笑顔だった。

『おお。お疲れ。あの子彼女か?』
『まさか! 幼なじみですよ。誰がこんなガサツで口の悪い女……』
「ガサツで口が悪くてごめんね! ほら、行くよ。皆さんお騒がせしました」

 少女が朝陽の背中を叩いて引きずるように彼をコートから連れ出す。コートを出る時に一瞬、少女と隼人の目が合った。少女は隼人に会釈して、隼人も目礼した。


 ――ここから5年後。彼と彼女は再び出会い、彼は本気の恋を知ることになる。