亮が翼と少年を交互に見る。

『翼の友達?』
『ミニバスチームの後輩の朝陽《あさひ》。小六だよ。朝陽、こっちが俺の兄貴と俺のバスケの師匠の渡辺亮くん』
『はじめまして! 椎名朝陽です!』

名前の通りにキラキラとした笑顔で朝陽が隼人と亮に挨拶をした。亮が朝陽の頭をくしゃくしゃと撫でる。

『おお。朝陽、よろしくな』
『渡辺亮さんって杉澤学院のあの渡辺さんですよね? 俺、ファンなんです! 前に翼くんと一緒に高校の試合観に行ったことがあります。スリーポイントがめっちゃ綺麗で感動しました!』
『ありがとな。隼人、聞いたか? 俺のファンだってさ』
『はいはい。よかったな』

 気のない返事で相槌を打ち、隼人は遠目に朝陽を眺めた。バスケ少年の朝陽にとって亮は憧れの存在のようだ。友達の贔屓目を抜きにしても亮のスリーポイントシュートは綺麗だと隼人も思う。

『亮くん達、コート使うよね?』
『ああ。練習してたとこ悪いな』
『全然いいよ! 亮くんと兄貴の対決久しぶりに観れるのワクワクする! ほら兄貴、亮くんコートで待ってるよ』

 亮と翼の間で勝手に話が進められ、隼人の体は翼によってコートに押し出された。

『わかったよ。でも手加減しろよ。俺は素人、お前はプロなんだから』
『何を言うか。普段まったく謙遜しないくせにこんな時に謙遜するなって。手加減したらストレス発散にならないからな。本気でいくぞ』

先にコートに入ってストレッチをする亮に倣って隼人も軽く体をほぐした。隼人を挑発する亮はなぜか楽しそうだ。

『翼は審判頼むな』
『了解でーす』

 亮が翼にボールを渡す。試合はジャンプボールからの1on1。ストレッチを終えた隼人と亮が所定の位置についた。