校門を出て赤い夕陽に向けて三人で歩く。

「三人で帰るの久しぶりだね」

前方を歩く男二人組は身長も肩幅も小学生の頃より大きくなっていて彼らから伸びる影もあの頃よりも大きい。

『そうか?』

渡辺が振り返る。隼人も足を止めた。

「そうだよー。もしかしたら小学生以来かも!」

 麻衣子は男二人組の間に入って両側から二人の腕を片腕ずつ組んだ。ここが幼稚園時代からの麻衣子の指定席。
背後に渡辺、麻衣子、隼人の影が並んだ。

『さすがに小学生以来ってことはないだろ』
『何ニヤついてんだよ。気持ち悪っ』

渡辺と隼人は呆れた顔で笑っていた。

「だって嬉しいんだもん」

 隼人が沙耶香から自分を庇ってくれたことも、また三人で帰り道を歩けることも、二人が自分と歩幅を合わせて歩いてくれてることも、今この瞬間が嬉しかった。

「隼人も亮もありがとうね」
『俺は何もしてねーよ。隼人を呼びに行っただけ』
『俺も自分の主張をしたまでだ』

素直じゃない男達。そんな二人の素っ気なさにも優しさが込められていると麻衣子は知っている。
もしかしたらこれからも隼人の恋人にはなれないかもしれない。だけど隼人の隣には居させてもらえる。それだけで満足だった。

 茜色の空の下。三人並んだ影法師は同じ歩幅で同じ方向を向いて歩いていく。

 この先の未来に何が待っているのかなんて何も知らないまま、永遠はきっとどこかにあるんだと淡い期待を抱いて

当たり前に繰り返される日々を当たり前に生きているだけだった。
それは麻衣子達がまだ子供だった証。

 やがて訪れる出会いも、そこに待ち受けている未来も、今はまだ知らなくてもいいことだから。


  ーENDー