麻衣子が沙耶香に詰め寄られる数分前。昇降口を出ようとしていた隼人は幼なじみの渡辺亮に呼び止められた。

渡辺と話をするのは久しぶりだ。夏休みには二人でそれなりに遊んではいたが、この1ヶ月ほどは渡辺とは話す機会もなかった。

『麻衣子が山崎沙耶香に呼び出された』
『は? なんで?』
『知るか。でも隼人のせいだろ?』

渡辺が何を言いたいのか隼人はすぐにわかった。沙耶香が麻衣子を呼び出す理由……確かに自分に関することしかない。

『二人はどこ行った?』
『裏庭の方』
『……わかった』

 昇降口で靴を履き、校門ではなく裏庭に向かう隼人の後ろを渡辺もついてくる。

『俺も行く』
『勝手にしろ』

 後ろを歩いていた渡辺が隼人の横に並んだ。同じ歩幅で同じ場所に向かう二人の頭の中には同じ顔が浮かんでいる。

大切な幼なじみの“アイツ”の顔が。